2007年最も印象に残った××××

:::本:::

走ることについて語るときに僕の語ること
村上春樹(文藝春秋)

例年よりは本に触れる機会がやや多かったものの、心にぐっと来る作品となると一握りだった。村上春樹を新刊で買うなんてここ十数年なかったが、周囲の人々の評価に押されて、書店で手にとりざまレジに直行した。誰もが直面するであろう「老い」の問題についての村上春樹の率直な語りは、昨年初めて病気らしい病気を体験した新米中高年のぼくの胸に、殊更リアルに響くものだった。老い、へのマラソンはもうスタートしている。走るぞ。ただし自分のペースで。

他にも…
「東京大学「ノイズ文化論」講義」は、現代という魔物に立ち向かう上で多くの示唆を与えてくれた参考書。「封印歌謡大全」は、様々な理由によって封印された歌謡曲〜フォーク〜ポップスを概観できる本。“おふくろさん”川内康範先生のタイムリーなインタビューも含め楽しめた。「平野甲賀 装幀の本」には昭和のデザイナーの底力が充満していた。「中川ひろたかグラフィティ」、もう何回通して読んだだろう。たくさんの人々が往来する“人生”という名の群像劇。

東京大学「ノイズ文化論」講義 宮沢章夫(白夜書房)
封印歌謡大全 石橋春海(三才ブックス)
平野甲賀 装幀の本 (リブロポート)
中川ひろたかグラフィティ 中川ひろたか(旬報社)
 
 
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:::雑誌:::

箱庭
(アトリエ箱庭)

一時期の雑誌熱もずいぶんさめてしまった。広告の容れ物としての雑誌は以前に比べて増えていると思われるほどなのに。新しい試みに出会うためには少々の手間暇が必要だ。「箱庭」は偶然出会ったミニコミで、羽良多平吉さんがデザインを手がけている。特集「プラトン社」(山名文夫所属)なんてセンスもいい。

他にも…
ジャンク・スタイル・シリーズの影響で「民藝」のバックナンバーを大人買いしたのも既に懐かしい記憶。意外に多く出ている住まいをテーマにした競合誌の中でも、大塚いちおさんのイラストを表紙回りに配した「レアリテ」はインパクトがあった(2号からデザインが変わってしまったのが残念)。もう一つ「別冊暮しの手帖 わたしの好きなインテリア雑貨/キッチン用品」は、昨年素敵なエディトリアル・デザインを量産したlunch木村さんの仕事。「母の友」は前からデザインが好きで集めていた(昨年は創刊50周年)。引越しの時に押し入れから出てきた後期「よい子の歌謡曲」のDTP以前の自由なレイアウトは、タイムカプセルを開いた時のような新鮮な衝撃だった。

民藝 (日本民藝協会)
レアリテ 01号 (エクスナレッジ)
別冊暮しの手帖 わたしの好きなインテリア雑貨/キッチン用品 (暮しの手帖社)
母の友 (福音館書店)
よい子の歌謡曲 (ファッシネイション) 
 
  
risaku
 
:::アート:::

鈴木理策:熊野、雪、桜
(恵比寿=東京都写真美術館)

実は「観に行くかもしれない展覧会」の半分も観られてなかった昨年。ケロポンズの声優デビュー「おやすみ、クマちゃん」のついでに観た鈴木理策の写真展は、ジェフ・ウォールばりにライトボックスを当てた写真そのものの美しさもさることながら、写真集をめくっていくような会場構成が素晴らしかった。暗い「熊野」のパートからトンネルのように続く通路を抜けたあとの、「雪」「桜」の目映い光景に身も心も救われる思いがした。
 
他にも…
前半二つは、Kiiiiiiiのツアーで訪れたニューヨークにて。日本人の作品も、あの天井が高くて広々としたソーホーのギャラリーでは全く違って見えるから、日本のアーティストも海外で積極的に展覧会を開くべきだと思う。「コウガグロテスク」展で見た、平野さんの自筆スケッチの束のことが忘れられない。「ル・コルビュジエ展」では「住み処」について考えさせられた。余生を過ごした夫婦二人だけの小さな別荘(原寸模型があって中に入れた)は、様々な大建築を残したル・コルビュジエがたどり着いた「終の住み処」だったように思える。

Jeff Wall (ニューヨーク=MOMA)
RYOKO AOKI/RIPPLES (ニューヨーク=Nicole Klagsbrun)
[コウガグロテスク]平野甲賀展 (駒場東大前=No.12 Gallery)
ル・コルビュジエ展 (六本木=森美術館)
 
  
drumlesson
 
:::音楽:::

Drum Lesson Vol.1
Christian Prommer’s Drumlesson(Sonar Kollektiv)

Christian Prommer's Drumlesson - Drum Lesson, Vol. 1

CDににせよライブにせよ、音楽方面にはほとんどお金を使わなくなった昨年。しかし不思議なことに前より音楽を聴く機会が増えているのは、ひとえにiTunesとラジオ(J-WAVEと、コミュニティFMのストリーミング放送)のおかげ。待ちに待ったKiiiiiiiと仕事をきっかけに聴いた五輪真弓も心に残ったけど、年末J-WAVEで良く流れていたこの作品には奥底で眠っていた魂をガツンと揺さぶられた気がした。過去のバラネスク・カルテットセニョール・ココナッツのテクノ・カヴァーとはまた違って、ドラムレッスンは直球(低め速球)のアプローチで、80〜90年代のテクノが孕んでいたソウルをそのまま生で抽出しているように思える。テクノ生搾り(?!)。 
 

warai 
 
:::キーワード:::

“笑い”

体調がまだあまり良くなかった頃、家にこもってテレビばかり観ていた。よく観たのは「ヘキサゴンII」「ネプリーグ」「Qさま」「はねトビ」など7時台から8時台の番組。「いいとも」も一時期は毎日欠かさずチャンネルを合わせていた。前にも書いたが、それ以前はその時間に家にいることなんて到底考えられなかったのだ。お笑いはもともと好きだったが、終息するといわれていたブームは昨年に入って収まるどころかますます広がり、芸人たちはあらゆる番組に活躍の場を広げていった。そういった彼ら彼女たちの芸に、昨年は本当に心の底から笑わせてもらった。実際、笑いに救われたところも多々あったと思う。30分や1時間弱で消えてしまう花火のような時間の中に、色とりどりの楽しさがあり、それ以外には何も残らない、そのことが妙にいとおしく思えたりもした。お笑いの人たちが書くテキストもまた違った意味で面白く、品川庄司の品川のブログや、ポエジー溢れるやなかなちゃんのブログ、時々とても鋭いふかわりょうのブログ(ICE宮内さんについての回とか)など、いつも(考えつつ)楽しませてもらった。
(画像は昨年1月、六本木・森美術館で開かれた「笑い展」
 

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