2009年最も印象に残った××××

:::本:::

『ポスターを盗んでください+3』
原研哉(平凡社)

これ読まずして原研哉を語ることなかれ、なのだった。いまや深澤直人のプロダクツのごとき完璧さを誇る(?)原さんの仕事の原点というべき、駆け出し青春デザイナー時代のエッセイ。溢れる文才。これは2009年に出た新装版。立場や仕事の規模こそ違えど、デザイナーとして直面する出来事のひりひりする感じは自分のそれと変わらず。
 

他にも…
「not in fashion」は、マーク・ボスウィックの魅力を120%以上見せつけた作品集。写真の冒険、デザインの冒険。2009年はあまり心に残るような読書をしなかったのでここまで。ちなみに「1Q84」は一応BOOK3の登場まで評価を待ちたい。ぼくにとっての村上春樹は、長編=ねじまき鳥クロニクル、短編=神の子どもたちはみな踊る、で完結しているからなあ……。

not in fashion Mark Borthwick(Rizzoli)
 
 

hikidashi
 
:::雑誌:::

デザインのひきだし
(グラフィック社)

昨年同様に不況の中、大型雑誌が次々と休刊していく一方で、KindleやiPhone/iPadを軸にした電子出版への扉がマジで開く5秒前(古)……といった感じの一年だった気がする。正直言って、休刊していく雑誌はもちろんのこと、新しい電子メディアにも特別興味をそそられることはなかった(いまのところ)。巨大なマーケットや大企業からの広告をあてにするのでなければ、媒体が何であれ、きちんとした丁寧な仕事は届くべき人々にきっと届くだろうし、むしろネットのおかげでそのチャンスは以前よりぐっと広がっているはず、といまだにのんきに構えている。

『デザインのひきだし』は毎回役に立つ特殊仕様・印刷や面白いアイデアがてんこ盛りで、作り手がデザインというモチーフを目一杯楽しんで作っているのが伝わってくる。デザイナーの人生訓・デザイン論などではなく、ちゃんと仕事や技術に光を当てているところも好感が持てた。広告に頼らなくてもターゲットを絞って独自のペースで成り立つ幸せな雑誌。きっと自分が目にしてないだけで、こういう雑誌(もちろんネットも含む)は各地に点在しているんじゃないだろうか。だといいな、と思う。
 

他にも…
イギリスが拠点の「MONOCLE」は東京にも支局を持ち、日本人イラストレーターの起用も多い。不況でもこういう厚手のクラスマガジンが成り立つところが洋雑誌の強み。その海外主要都市の雑誌を特集した「+81 Voyage」Tokyo Graphic Passportは興味深かった。特集と同名のイベントも開かれたとのこと(見たかった)。「すくすく子育て」は子育てにまつわるお役立ち情報が満載で、デザインも洗練されていてNHKのテキストにはとてもみえない(イラストレーターの選択もGood)。定期講読中。残念ながら立ち消えになった雑誌仕事の資料として古本屋で買った、80年代初期の投稿雑誌「ポンプ」は、早すぎた紙版ツイッターだった。なんと当時の編集長がツイッターを使ったポンプ「ついぽん」を企画中。

MONOCLE (モノクル)
+81 Voyage “Tokyo Graphic Passport” (ディー・ディー・ウェーブ/河出書房新社)
すくすく子育て (NHK出版)
ポンプ (現代新社)
 
 

niikuni niikuni-mau
 
:::アート:::

新国誠一の《具体詩》ー詩と美術のあいだに
(大阪=国立国際美術館、東京=武蔵野美術大学美術資料図書館1階展示室)

新国誠一の大規模な回顧展が大阪と東京で開かれ、幸運にも両方とも観ることができた。タイポグラフィ、グラフィックデザイン、コラージュ/カットアップ、そして詩、その全てにまたがる偉大な祖。感想はこちらこちらの記事に書きました。

 
他にも…
『浜田島』はアートディレクター田島照久による浜田省吾関連ワークスの集大成。裏信藤三雄。『江戸の幟旗』は江戸の庶民の素朴な職人芸と、それを集めるコレクター魂を見せつけられた。『もうちょっとだな』。80年代の巨匠と認識していた原耕一さんの、90年代〜ゼロ年代と続く、写真を軸とした力強い仕事をこの展示で知る。『スカート』をはじめ昨年連続して開かれた北村範史さんの個展は、私的な世界を場の空気と組み合わせてプレゼンテーションしていくやり方が参考になった。

浜田島 The Exhibition of Shogo Hamada by Teruhisa Tajima (みなとみらい=横浜赤レンガ倉庫)
江戸の幟旗(のぼりばた) 庶民の願い・絵師の技 (渋谷=松濤美術館)
原耕一 アートディレクション展「もうちょっとだな」 (新橋=クリエイションギャラリーG8/ガーディアン・ガーデン)
北村範史 個展「スカート」 (早稲田=LIFT)
 
 

bibio lone
 
:::音楽:::

Ambivalence Avenue Bibio(→MySpace
Ecstasy & Friends Lone(→MySpace

60年代のフリー・ジャズの混沌をさわやかに切り裂いたチック・コリア『リターン・トゥ・フォーエヴァー』、とか、ヒップホップ/ラップのメッセージ中心主義を粋なサンプリングで脱臼したデ・ラ・ソウルやア・トライブ・コールド・クエストの登場、とか、80年代末期のアシッド・ハウス一色の世界にRTFのように現れた808ステイト『90』、とか……年代の変わり目に、硬直した状況に対する膝カックン的な人々が出てくるのが面白い。ボーズ・オブ・カナダに代表されるシリアスなエレクトロニカを継承しつつ、そこに楽天的/楽園的な空気を取り入れたのが、ビビオやローン、という解釈でいいのかな。BOCミーツ・ビーチボーイズとも言われるビビオの一曲目を初めて聴いたとき、春風が吹いてくるような感覚をおぼえた。ボーズ・オブ・カナダが冬で、ビビオが春、ローンは真夏の南の島。

 
他にも…
『UNITE』から続く三部作の二作目『WALK』でスムルースは確実に成長した。『Focus』は末永く聴けそうなポップスの玉手箱。『メゾン・ド・ヒミコ』は『ゼロの焦点』サントラ仕事の資料に購入。サントラだけで成立する音世界がさすが細野さん。『Las Vegas』『Arrange And Process』は、通勤中iPodヘビロテ賞(ある種のドライビング・ミュージック)。

WALK スムルース
Focus 黒沢健一
メゾン・ド・ヒミコ オリジナル・サウンドトラック 細野晴臣
Las Vegas Burger/Ink
Arrange And Process Basic Channel Tracks Scion

 
:::キーワード:::

“死/生”

マイケル・ジャクソン、忌野清志郎……と青春時代をともに過ごしたヒーローの早すぎる死。これから年を取ってますます自分に縁のある人があちらの世界へと連れ去られていく機会が増えていくに違いない。そんな中で心に残った名言は、矢野顕子の「忌野清志郎の葬式に4万人とか40万人とか集まったんだって? そんなのに集まれるくらいだったら、生きてるうちに来い! 生きてる矢野顕子を見に来い!」だろう(www.さとなお.comより引用)。家族三人でいまこうして生きていることを、目一杯楽しみたい。これからもできるだけ多くの仕事と言葉を紡いでいこう。それが死んでいく魂への慰めにつながるかは全くわからんけれども。
 

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