2010年最も印象に残った××××

:::本:::

『ジョニー・B・グッジョブ 音楽を仕事にする人々』
浜田淳(KANZEN)

不況だ不況だとあちこちで煽られて、音楽の世界に身を置く自分の仕事の今後を案じてしまうことも多かった2010年だったけれど、このインタビュー集を読んで、飄々とマイペースで自分の道を進む音楽人たちの言葉に勇気づけられた。アーティストからメーカー、裏方、流通・小売、果ては音楽の先生まで、よくこれだけ面白い人々を集めたものだと感心した。円グラフや表計算の数値からは絶対に見えてこない、取り替えのきかない「個」の姿を浮き彫りにしているからこそ面白いのだろう。第2弾が発行されることになって、そこに“デザイナー”の項があったら自分もぜひインタビューされてみたい。

 
他にも…
『文字をつくる 9人の書体デザイナー』は、書体作家の素顔に丁寧に迫るインタビュー集。この本から受け取った宿題にまだ答えを出せていない。『THE SMALL STAKES|MUSIC POSTERS』は、アメリカ在住デザインチームのミュージック・グラフィックスを集めた作品集(作品も見られる公式サイトはこちら)。シンプルで美しい。『春夏秋冬 お菓子の旅』は、きれいな日本のお菓子や包み紙がいっぱい紹介されていて、去年結局ボツになった仕事の資料として活躍した思い出の本。蒼井優のポップアップ写真集『うそっ。』は、日本人のデザインスタッフによる意欲的な仕掛けがたっぷり。『ザ・ケロポンズ』は2010年の春から夏にかけて全力を注いだ思い出の仕事。
 
文字をつくる 9人の書体デザイナー 雪朱里(誠文堂新光社)
THE SMALL STAKES|MUSIC POSTERS Jason Munn(Chronicle Books)
春夏秋冬 お菓子の旅 松江・京都・松本・金沢 ほか日本各地 甲斐みのり(主婦の友社)
うそっ。 蒼井優(PARCO出版)
ザ・ケロポンズ ─見たい!知りたい!ふたりのすべて─ ケロポンズ(鈴木出版)
(※ここまで、書影・書名はAmazon.co.jpにリンクしています。)
 
 
dommune
 
:::雑誌(的なもの):::

DOMMUNE

紙雑誌の休刊や電子雑誌の創刊といった直近のトピックよりも、そこから何が継承されて今後どういう形で生き延びていくかを見届けることが重要だと思う。そういう意味で雑誌の形へのこだわりは昨年を境にほとんどなくなった。ソーシャルブックマークやRSSが新聞で、2chまとめサイトや個々のブログが雑誌、ということでもうほとんどいいのではないか。
DOMMUNEは形態としてはラジオに近いのかもしれないが、ホチキスがほどけてしまった後の未来の雑誌はこんな感じ、という希望を見せてくれた。あの尽きないマニアックな特集力と、ネットとリアルの双方を巻き込んだ連夜のメディア・アートを見せつけられると、現状の電子雑誌のインタラクティビティはまだまだ中途半端だという気がしてしまう。

>>DOMMUNEに行ってきた。|パラグラフ
 

他にも…
「週刊ダイヤモンド」フリー特集は、クリス・アンダーソンの著書『フリー』の概念を、雑誌ならではの見せ方でわかりやすく紐解いてくれた。ほかの特集も含め、雑誌としては昨年一番動きが目立っていた。「ストレンジ・デイズ」は、かつて愛読していた80~90年代の日本のポップス雑誌「POP IND’S」の編集長が立ち上げた雑誌だということを最近になって知った(内容は当時と全然違うけれど)。年末に出たボックスセット特集など、マニアックながら丁寧な編集とデザインに感心。「広告批評」なき後のグルビのエディトリアルデザインが堪能できる「メトロミニッツ」は、東京メトロの駅のみの配布でしかもすぐになくなってしまう紙版よりも、iPad版のコンパクトなサイズにひかれた。最後に、発見したのは年明けだったが、福岡のリトルプレス「tenran」は、「展覧会」をそのまま雑誌に再現したような誌面で、イラストレーションのプレゼンテーションの仕方が見事。
 
週刊ダイヤモンド (ダイヤモンド社)
ストレンジ・デイズ (ストレンジ・デイズ)
メトロミニッツ (スターツ出版)※リンクはiPhone/iPad版
tenran (エフ・ディ)
 
 

hibino

:::アート:::

日比野克彦 個展「ひとはなぜ絵を描くのか」
(末広町=3331 Arts Chiyoda)

日比野克彦が作品を発表し始めた当時、素材がダンボールで保存がきかないからと、ギャラリーや画商に全く相手にしてもらえなかった、という話を聞いたことがある。それからは芸術に価値を求める世界には背を向けて、今日のように独自の活動をするようになった、と(伝聞なので違っていたらすみません)。プロパーなアートシーンに決しておもねらない独自の活動の軌跡(現在進行のものも含む)が網羅されていて、とても面白かった。トランジットで滞在したフランスのホテルに缶詰になって描いた即興デッサンの展示が、ひとはなぜ絵を描くのかという問いへのセルフ・アンサーになっていたのが特に印象に残った。こういう企画も許容する3331 Arts Chiyodaというギャラリー自体も気に入った。

 
他にも…
『セラミック・ワークス』は、奈良美智の物作り力に素直に驚嘆した。『田中一光ポスター1953-1979』では、日本を代表するグラフィックデザイナーの戦闘的な姿勢を見せつけられた。いろいろ勉強になった。『いのくまさん』を観て、猪熊弦一郎みたいな人こそ天才にふさわしいと思った。大島依提亜氏によるヴィジュアルデザインも美しかった。『TDC展 2010』。TDC展は、現在と共鳴する貴重なコンペティションだと思う。『ゴーゴー・ミッフィー展』を3回観た。イラストレーターではなくやはりデザイナー。当時1歳の娘が最初に好きになったキャラクターがミッフィーで良かった。
 
奈良美智展「セラミック・ワークス」 (清澄白河=小山登美夫ギャラリー)
DNPグラフィックデザイン・アーカイブ収蔵品展II 田中一光ポスター1953-1979 (銀座=ギンザ・グラフィック・ギャラリー)
猪熊弦一郎展『いのくまさん』 (初台=東京オペラシティアートギャラリー)
TDC展 2010 (銀座=ギンザ・グラフィック・ギャラリー)
ゴーゴー・ミッフィー展 (銀座=松屋銀座)
 
 

shiftrise

:::音楽:::

Shiftrise ソノダバンド

ある意味ベタなフュージョンだけど、初期YMOやカシオペアも好きなのですんなり受け入れざるを得なかった。気がつくと仕事のBGMになっていた。メジャーデビュー作よりもこちらの方が好き。
 
他にも…
神聖かまってちゃんは昨年一番の目玉。「ロックンロールは鳴り止まないっ」はロック史に残る名曲だと思う。『Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2』で久々にちゃんと宇多田ヒカルを聴いた。チック・コリアへのオマージュ「Hymne à l’amour ~愛のアンセム~」に驚嘆。『Gute Luft』やJimmy Edgar『XXX』など、テクノ関連の面白いアルバムは、matsu&takeさんのサイトで教えてもらうことが多かった。最後に……実は昨年iTunesで一番再生回数が多かったのは、スマイレージのリミックスでした。くるりの「ワンダーフォーゲル」を彷彿とさせるロックな四つ打ち。→Youtube
 
友だちを殺してまで 神聖かまってちゃん
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2 宇多田ヒカル
Gute Luft Thomas Fehlmann
○○ がんばらなくてもええねんで!!(TopNude Remix Version 01) スマイレージ

 
:::キーワード:::

“フリー”

ベストセラーになった書籍の方は斜め読みして、週刊ダイヤモンドのフリー特集で大まかに全体を理解し、恒例だったエイプリルフールの最終回ではこんな企画までやってしまった(忙しさが高じてまだ特典のデザインは納品できておらず、当選者の方には大変申し訳ないことに……。後日必ず)。「フリー」的な物事や場(Twitterなんかもそう)に人々が群がるようになり、お金がなくても楽しめることがたくさん出てきたおかげで、あんまり困らなくなったし、ゼロ年代にそこはかとなく感じていたさびしさも減ったように思う。ニコ動、Youtube、pixivなどに新しい才能が集まる一方で、それまでメインの場と思われていたチャート指向的なマーケットは閑散としてしまう、もしくは、そういうチャート的な指標が実情を必ずしも正しく反映していない、ということが起こるようになった。物差しは既製品ではなく各自が個々にこしらえて用意すべき時代なのかもしれない。不安も多いけど、個人的にはいままでにない自由を楽しんでいるつもり。


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