神がくれた「フェイク」という宿題 〜『V.S.G.P』のアートワークについて〜

神がくれた「フェイク」という宿題 〜『V.S.G.P』のアートワークについて〜

前作の『Focus』からあまり間を置かず、次の作品をリリースするかもしれない、と黒沢健一さんから聞いたのは、たしか2009年末の東京グローブ座公演の楽屋だった。世田谷パブリックシアターとグローブ座公演の音源をまとめたライブ盤、もしくはCD+DVDのカップリングを作りたいという構想を口にしていたと記憶している。それから半年。年が明けて春が過ぎ夏が訪れても、レコーディングについての具体的な情報はなかなか伝わって来なかった。そもそもぼくがその作品に再びデザイナーとして関われるかどうかも未知数だった。 【続きを読む】

“春の訪れ”と奇跡の「白い壁」 〜『Focus』のアートワークについて〜

“春の訪れ”と奇跡の「白い壁」 〜『Focus』のアートワークについて〜

7年ぶりにリリースされるという黒沢健一さんのソロアルバムのデモを聴いて最初に浮かんだのは、一面に広がる純白の雪景色だった。「冬のうた」とタイトルがつけられた一曲目(のちに「Grow」と改題)の印象がとりわけ鮮烈だったからかもしれない。“君はここから出ていくが、僕はここに残る”という歌詞のシチュエーションが、村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」の〈世界の終り〉の光景を思い起こさせた。永遠に続く冬。ビーチボーイズに『Endless Summer』というベスト盤があるが、さしずめこのアルバムを覆う静謐な世界は『Endless Winter』と呼ぶにふさわしい。配信版シングルのリリースも冬だったし、いっそ発売日も繰り上げて真冬にリリースしてみてはどうか……次々とあふれてくるぼくのばかげた妄想を黒沢さんはにこやかに全部聞いてくれたうえで、しかしきっぱりと、「これは春の訪れを感じさせるアルバムにしたいんです」と言い切った。たしかに、7年間の長い冬を過ごしてきた黒沢さんにしてみれば、このアルバムのリリースは待ちに待った“春の訪れ”にほかならなかった。 【続きを読む】