クラフトワーク3-D東京公演を観てきた

クラフトワークの9年振りの大がかりな来日公演(NO NUKES 2012を除く)が大盛況のうちに終了しました。参加したのは、東京・赤坂BLITZの 5:Computer World8:Tour de France の2回だけでしたが、今回は事前にセットリストの予想記事を書いていたこともあって、コンサートへの入り込み方が通常に比べて半端なく、彼らが既に次のツアー先へ旅立ってしまったあとも興奮醒めやらぬ、といった感じでした。
 

インスタレーションから「コンサート」へ

今回の東京公演は、世界主要都市で開かれている、The Catalogue 1 2 3 4 5 6 7 8(3D映像と共に過去8作品を8日間で再現するシリーズ)の一環でした(第一回のNYのみ、Retrospective 1 2 3 4 5 6 7 8)。

ロンドン公演までは会場がいずれも美術館だったこと(ニューヨーク:MoMA、デュッセルドルフ:K20、ロンドン:Tate Modern)、また、一連のコンサートで使われている3D映像が世界初披露されたのが、ドイツ・ミュンヘンのレンバッハハウス美術館でのインスタレーション(2011/10/15~11/13)だったことから、3D映像は、もともと単なるコンサートのためのBGV、というよりも、それ自体が完結したアート〜インスタレーション的な表現として企図されたものだったことが想像されます。
 

 
ドイツ・レンバッハハウス美術館での3Dインスタレーションの様子を伝える映像
壁に設置された複数のスクリーン上の3D映像を、観客が広いギャラリースペースで観覧している。
映像は3-Dコンサートで流れた内容と同じ(ドイツ語ヴァージョン)。
メガネはコンサートのものとは形状が違い、渡し切り(配布)ではなく貸出式っぽい。
美術館のリンクが消えているため、下記は展示中の館内写真へのリンク(写真8枚・最後はコンサート)
http://goo.gl/j3l3q

 

しかし今回の東京公演で初めてアートの文脈から離れて、ライブハウスの赤坂BLITZが会場となり、9年振りの本格的な公演を待ちわびた日本のファンの熱狂的な大歓迎を受け、このシリーズでは全くやらなかったアンコールまでやってくれて……と、開始当初からのシリーズの主旨がこの8日間をきっかけに大きく変わったのではないでしょうか。3Dの映像美とサウンドと、クラフトワークのパフォーマンスと観客の反応が一体化した、まさに「完全体」ともいうべき内容で、それが予定外の東京・大阪での2回のアンコールにも繋がったのだとしたら嬉しいです。
 
 

ここからは2月に書いた「クラフトワーク3-D東京公演の曲目を予想してみた」の検証を兼ね、実際にLIVEを体験して気づいたこと、その後新たに調べてわかったことを、個人的なメモ代わりに残していきます。

クラフトワーク3-D東京公演の曲目を予想してみた|パラグラフ
https://paragraph.jp/2013/02/3-d-concerts-1-2-3-4-5-6-7-8/

 
2月に書いたデュッセルドルフ公演の内容を元にした予想でしたが、だいたい大筋で当たっていました。後半の定番曲パートでは『コンピューター・ワールド』がほぼフルで聴けたほか、「Metropolis」以外の『人間解体』収録曲が連日セットリストに含まれていました。7:The Mix は、実質「コンピューター・ワールド」+「人間解体」をフルカヴァーする内容。連日演奏された「Spacelab」の3D映像は、日本列島が映像の中に挿入された、日本公演独自の内容でした。この曲と「Radioactivity」「電卓」には、クラフトワークから日本への特別な想いのようなものを強く感じました。

純粋にレア曲、アルバム曲を多く聴くためなら、やはり 2:Radio-Activity とか 8:Tour de France あたりに行くのがベターだったかもしれません。ただ、結果的にどの日もバランスよく聴きどころが設けられ、よく考えられたセットリストだと思いました。

 
実際の演奏曲数は発表されたセットリストよりも多かった

2月に予想として挙げたデュッセルドルフに比べると、ウドーのサイトで連日発表された来日公演のセットリストの方が曲数としては若干少なめでした。が、実際にはリストに含まれない曲も組曲の一部として演奏されていたようでした。

RADIOACTIVITY = Geiger Counter + Radioactivity
TRANS-EUROPE EXPRESS = Trans-Europe Express + Metal On Metal + Abzug
HOME COMPUTER = It’s More Fun to Compute + Home Computer
BOING BOOM TSCHAK = Boing Boom Tschak + Techno Pop

こうしてカウントすると、各日のアルバム曲はほとんど演奏されたことになります(『Tour de France』の「Prologue」は、構成上演奏されていませんでした)。

 
「Radioactivity」について

NO NUKES 2012ヴァージョンの映像(2-D映像)と日本語詞の出る箇所が変わり、「TSCHERNOBYL〜」と地名を連呼する所は、日本語ではなく元の欧文に戻っていました。2月に書いた記事で「Radioactivity」について「屈辱」という表現を使ったのは、全部の歌詞が日本語フォントのヒラギノゴシックでどかーんと表示されることへの違和感/恥ずかしさが大きかったです。しかし、今回の3-D映像ではそういった恥ずかしさがなくなり、クラフトワークのメッセージや日本に対する想いがよりストレートに伝わってきた印象がありました(デュッセルドルフ、ロンドンで演奏されたのも今回と同じ、日本語詞を含むヴァージョン)。

ウィキペディアで調べたところ、「Radioactivity」の日本語詞を監修したのは坂本龍一、との記述がありました。クラフトワークとYMO一派の珍しいコラボがまたひとつ実現しました。

>>放射能(アルバム)- Wikipedia

Radioactivity(NO NUKES 2012) >>クラフトワーク公式サイト >>YouTube
 

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「Planet of Visions」について

来日公演の前に調べた各国のセットリストでは「Planet of Visions」と「EXPO2000」が混在していたり、「EXPO2000(Underground Resistance Mix)」との記載があったり少し混乱していました。総合すると、

Planet of Visions = EXPO2000 + EXPO2000 (Underground Resistance Mix)

ということになるようです。かつて「EXPO2000」として発表された曲を「EXPO REMIX」とのメドレーで演奏する時の曲名が、ある時期から「Planet of Visions」に改題された、と。このメドレー形式での演奏はおそらく2002年頃から行われていたが、曲名変更が正式に広まった/伝わったのは、ライブアルバムの『Minimum-Maximum』(2005)発表以降ではないかと思われます。

「EXPO2000」はドイツのハノーヴァー万博のテーマソングとして制作された曲でしたが、偶然見つけた当時の万博のレポート記事で、ハノーヴァー万博には「Planet of Visions」という名前のパビリオンが存在していたことがわかりました。パビリオン内で「EXPO2000」が実際に使われていたかどうかは不明です。

>>ハノーバー万博見学記 (当時万博を訪れた個人のレポート)
 

……もう一本調べ中の項目がありますが、長くなりそうなので後で追記するか、記事を別に分けます。
 

約2時間に及ぶ長丁場を、休憩や水分補給もせずずっと立ちっぱなしでこなしたクラフトワークの高齢メンバー(ラルフ67歳、ヘニング59歳…)を筆頭とした4人によるパフォーマンスとサーヴィス精神には、心から感服させられました(デュッセルドルフと、今度のシドニーでは一日二回公演も!)。さすがマンマシーン、というか、噂に聞く日頃の自転車鍛錬の賜物なのでしょうか。今度来日する時まで、彼らのタフさに付いていける体力をキープしておかないと。次回はぜひ新作での来日を!
 
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