「緩やかなレーベル」とロゴデザインのこと

音楽プロデューサーの牧村憲一氏が新たに立ち上げたレーベルプロジェクト「緩やかなレーベル」のロゴデザインを担当しました。緩やかなレーベルは、レーベル・プロデューサーの牧村さんを軸にした、様々なつながりによる緩やかな集合体で、2018年春に第一弾としてリリース予定の都市型ポップスコンピレーションに向けて音源を募集しています。詳しくはウェブサイトをご覧ください。

緩やかなレーベル https://www.yuruyakana.jp/
 
レーベル・プロデューサーの牧村憲一氏は、70年代から山下達郎、大貫妙子、竹内まりや、加藤和彦 etc. の音楽制作に関わってきたほか、80年代には細野晴臣が主宰するノン・スタンダード・レーベルの設立にも参加、89年にロリポップ・ソニック(のちにフリッパーズ・ギターと改名)を見出して世に送り出し、フリッパーズ・ギターの解散後はポリスター・レコードで「トラットリア」「ウィッツ」という2つの重要な音楽レーベルの設立にも携わっています。ウィッツは、黒沢健一&秀樹兄弟が所属するバンド、L⇔Rがデビューを飾ったレーベルです。そのプロデュース・ヒストリーの一端は、今年刊行された牧村さんの著作(藤井丈司・柴那典との共著)『渋谷音楽図鑑』で垣間見ることができます。そんな牧村さんがいま、満を持して立ち上げるレーベルが「緩やかなレーベル」ということになります(ここまで敬称略)。


 

ここからは、自分の勝手な想いについて綴ります……。まず、はじめにお断りしておくと、今回のロゴ制作のお話は当初、牧村さんから直接いただいたものではありませんでした。数年前に初対面の自分を生活クラブのアート・ディレクションの仕事に誘ってくださった方(音楽業界の方ではありません)が、たまたま今回のレーベル立ち上げの件にも協力していて、デザイナーとしてぼくのことを推薦してくれたのです。ぼくが黒沢健一さんのアルバムのデザインをしていたことなど、牧村さんとの隠れたつながりについて深くは存じなかったはずです。でも「緩やかなレーベル」の緩やかな成立の背景を考えると、これ以上ないようなふさわしい出会い方だった気がします。

牧村さんとは、黒沢健一さんの東京グローブ座でのコンサート(2009年。アルバム『V.S.G.P』に音源が収録されたライヴ)が初対面でした。黒沢さんがステージ上から、これから歌う「EQUINOX」(牧村さんが海野祥年という筆名で作詞したL⇔Rの曲)を作詞された方がきょう会場にいらっしゃってます、と紹介したとき、ぼくは牧村さんの隣の席にいました。80年代が音楽的思春期だったこともあって、ノン・スタンダードの初期のレコードはほとんど所有していましたし(ピチカート「V」もその時知りました)、フリッパーズや、コンピレーションの『Fab Gear』、コーネリアスやブリッジなどトラットリアの作品もリアルタイムで聴いていました。そんなお話を終演後の楽屋でさせてもらった記憶があります。ほかにも間接的なつながりはいくつかあったものの、なんとなく仕事で直接ご一緒する機会はないだろうと長らく信じ込んでいたところがありました。だからお話が来たとき、本当に天上から誰かがつないでくれたんじゃないかと思ったほどです……。きっとそうなんだろうと思うことにします。
 

さて、長くなりましたが、ロゴについてのお話です……。これまでロゴデザインやグラフィックの中に自分の筆跡を残す、ということにどちらかといえば抵抗がありました。しかし、牧村さんがかつて携わっていた70年代の音楽制作や、映画『この世界の片隅に』のプロモーションがそうだったように、一人から二人へ、手作り・手渡しで人から人へ少しずつ、音楽を伝えていくようなレーベルにしたいというお話を伺って、ぼくがデザイン以前に(手書きの会報、ミニコミなどで)使っていた自分の筆跡をそのまま活かしてみたいと思ったのです。でも、ただの手書きではなく、グラフィックデザイン以降の経験が少し加わった、なんとも緩やかな仕上がりになりました。その意図は、今後使われていくにつれて、だんだん明らかになっていくのではないかと思っています。
 

 
>>坂道から音楽が生まれる街。『渋谷音楽図鑑』 -前編-|渋谷新聞
>>坂道から音楽が生まれる街。『渋谷音楽図鑑』 -後編-|渋谷新聞





シェアする