Hoickリモートサービスとセミナーの今後

Hoickのリモートサービス(おうちコンサート、おうちセミナー、リモート園ライブ、リモート園内研修)の立ち上げ(2020年5〜6月にサービスイン)に際し、ロゴデザインとバナーのごく一部をお手伝いしました。

時間もなく、求めに応じて既存の仮デザインをフォントなどを使って置き換えただけの簡単な仕事ですが、仕事のご報告、というよりは、コロナ禍突入直後の記録として書き留めておきたいと思います。
 


 
児童書・保育関係に特化したECサイトのHoickと、その活動主体であるソングブックカフェが、新型コロナウイルス感染症のあおりをモロに受け、それまで5組の所属アーティストが全国各地で行っていたコンサート、園ライブ、セミナーなどが一切開けなくなってしまいました。

7月のコンサートと、保育園の先生を対象に開かれる毎年夏のセミナーでの販売を目指して進行していたCDブックの第4弾も、その影響により4月の段階で制作が中断してしまいました(7月現在も再開の目処が立っていません)。

所属する5組がそれぞれに活動停止を余儀なくされることになり、このままでは危ういのではないかと個人的には受け止めました。一事務所レベルの話にとどまらず、長年お世話になってきた保育音楽業界全体が崩れてしまうとしたら、それは非常にまずいことだ、と。

 
CDブックの最初の打ち合わせがあった2月(新型コロナが猛威を振い始める直前)に、ソングブックカフェ社長の中川海太郎さんから、HoickのECサイトとしての業態も今後変えていきたい、という意向を伺っていて、その時にもオンラインセミナー(オンラインサロン)のことが少し話題に出ていました。

春休みに先駆けて子どもたちの通う学校の休校が決まった3月中旬から、うちの娘が昨年末から受講し始めた探究学舎という塾が、YouTubeを使ったリアルタイムの授業を2週間毎日無料で公開しました。探究学舎は早くからZoomを使ったオンライン授業を実現しており、そのしくみはコロナ禍以降にもそのまま展開可能なレベルでした。

同じ頃、家で今後の保育音楽業界についての話題になった時、妻がぼくもまだ知らない、探究学舎をはじめとする、オンラインでも従来のように収益化が可能になりそうな事例をいろいろ教えてくれました。Peatixなどのチケットサービスを使ったチケットの販売、Zoomを使った参加型オンライン配信のしくみ、Vimeoによる動画販売・レンタルサービス、etc…。

ぼくも古巣の音楽業界での、Zoomによるリアルタイムオンライン配信の試みに早くから注目していました(とくに高野寛さんのnoteで紹介されていた、ミュージシャンの実務レベルに即した豆知識など)。

それらをまとめて、困っている保育音楽業界の仲間たちに教えよう、ということになりました。
 

4月に、ひとまずHoick/ソングブックカフェ社長の中川海太郎さんに「あそびうた関連コンサート・講習会のオンライン化&収益化」というタイトルで投げかけたところ、非常に好反応が返ってきました。社長自身がWEB関連のエンジニアリングを得意とし開発能力もあるソングブックカフェが、こちらが投げかけた知識を100%以上に理解してサービス展開できる会社だったことも幸いしました。チケット販売もPeatixやZaikoに頼らず、Hoickで培った自前のシステムと会員網をそのまま転用できるとのことでした。
 

サービスマトリックスと呼ばれるバナー(一番上)にもあるとおり、「おうちセミナー」「おうちコンサート」の2つが、家庭や個人レベルでの(現状あちこちで普及している)Zoomを使ったオンライン双方向配信サービス。「リモート園ライブ」「リモート園内研修」の2つが、既存の人が集まるセミナーと「おうち」の中間的存在の、園のテレビを利用した保育園単位の双方向配信となります。このうち「おうちセミナー」が高い伸びを示しているそうです。結果的に、ソングブックカフェはこの事業で大きく息を吹き返すことに成功したみたいでホッとしています。
 

これまで保育園の先生を対象としたセミナー(保育音楽系のアーティストが出演して、最新のCDブックからあそびうたを披露する場)や講演会は、複数の出版社が主催し公営の(1000人収容以上の)ホールを借りて、毎年夏休みシーズンに大がかりな形で開催されるのが常でした。そこでの物販(新刊やCDのサイン会を伴う直販)が、参加アーティストや各出版社・レコードメーカーにとっての大きな収入源となっていました。新型コロナウイルスはこれまで当たり前だった夏の風景を一変させてしまったのです。

どこかが勝ち残るとか、勝ち負けの話ではなく、できるだけ多くの人があぶれることなく一緒に、──ロックンロールという音楽が限られた人たちに独占されることなく、大勢の人が真似した結果世界中に広まっていったのと同じように──この過酷な状況をみんなで乗り越えてほしいと願っています。
 

ぼくは90年代中盤からの約10年間、音楽プロダクションに勤務し、音楽の世界における収益とその変化を間近でずっと見てきました。また、とくに2010年代以降は、ハロプロをはじめとするアイドルに継続的にハマっています。そういう方面での知識は、とくに出版の仕事には役立つことが多いのではないかと日頃から感じていました。

業界全体を覆う不況、コピープロテクト、電子形式での配信、ディストリビューション(取次)の変化、プロモーション、ファンダムを育てること……出版業界がここ数年の間直面している課題は、(ちょうど自分が働いていた頃の)音楽業界が直面し乗り越えてきた問題と重なっています。音楽と出版には15年くらいの時差がある、というのがぼくの持論です。もちろん音楽と出版(とくに子どもを対象とする世界)では市場規模が大きく異なり、単純にノウハウをそのまま持ってくれば済む話ではないことは付け加えておきます。

そういった知識を提供する行為は、デザインの仕事に際して特別にクレジットされたりするものではありませんが、必要に応じてこれからも惜しみなく与えていけたらと考えています。