下山ワタル DESIGN ARCHIVE

下山ワタル DESIGN ARCHIVE

1990年代末から近年までの仕事を、ジャンル別にセレクトしたポートフォリオを公開しました。
PDFで、どなたでもご覧いただけます。

下山ワタル DESIGN ARCHIVE[PDF|16MB]

縦型 ── 44P(A4サイズ)

*出力をファイルに収めたものも用意しています。
法人・編集部等でご入用の方は、Contactよりお知らせください。

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2019年最も印象に残った××××

2019年最も印象に残った××××

:::アート:::
 
絵本に見るアートの100年―ダダからニュー・ペインティングまで (上野=国際子ども図書館)
韓国で見つけた、アートブックとZINEの世界 (目白=ブックギャラリーポポタム)
話しているのは誰? 現代美術に潜む文学 (乃木坂=国立新美術館)
塩田千春展「魂がふるえる」 (六本木=森美術館)
石川直樹「この星の光の地図を写す」(初台=東京オペラシティアートギャラリー)
大日本タイポ組合展「文ッ字」(町田=町田市民文学館ことばらんど)
ジャン・ジュリアン個展「レコニル」(渋谷=NANZUKA)

絵本とアートを見事につないだ国際子ども図書館の展示と、本場・韓国のアートブックフェアに匹敵するようなポポタムのイベントが印象に残りました。仕事などの目的に囚われず、ふらっと立ち寄った展示が良かったりとか、東京のアート環境の良さを再認識しました。

2019年に観た展示の全記録です。>> twilog#gbiyori

 
:::音楽:::


 
834.194 サカナクション
So kakkoii 宇宙 小沢健二
mint exorcist FINAL SPANK HAPPY
bless You! オリジナル・ラヴ
波形 bird
FRKWYS Vol.15: serenitatem Visible Croaks, Yoshio Ojima & Satsuki Shibano
Ivy To Roses (Mixtape) Mabel
IT’z Different ITZY
(リンクはSpotify)
 
音楽のほとんどをSpotifyで聴くようになって、アルバム、シングルといったこれまでのくくりが後退し、「Spotifyを聴く=音楽を聴く」感覚に近くなりました。プレイリストを作って自分でも発信するという新しい音楽の楽しみ方が増えるとともに、新作と旧作の境がますます曖昧になっていくのを感じます。

Spotifyのグローバルチャートで知った、2019年の世界のヒットを象徴するキーワードは、「レゲトン」「ビリー・アイリッシュ」「Lilと名の付くアーティスト」「K-POP」「ジョナス・ブラザーズ」etc…といったところです。特にレゲトンは世界中で猛威を振るっていました。J・パルヴィン、マルーマ、ファルッコ、ダディー・ヤンキー、Dalex、バッド・バニー、ニッキー・ジャムといった面々の名前をチャート上で見ない日はなかったし、ぼくの仕事と生活のリズムも一時期レゲトンに完全に支配されていました。

小沢健二のように十数年振りのニューアルバムと共に元気な姿を見せてくれるアーティストがいた一方で、Spotifyも含めて市場から一切の音源が消えてしまった人気アーティスト、有名どころが次々と配信音源を開放していく中で一種の我慢比べみたいになっているCD派などなど、サブスクリプションという窓を通して見えてくる状況に注目しつつ、人生史上最高に音楽を楽しんでいます。

 
サカナクション『834.194』

初夏はほとんどこのアルバムだけをエンドレスで聴いていました。4つ打ちの単調なポップスを量産するグループという先入観をずっと持っていたけど、実は現在に通じる生音を取り入れた路線変更が2014年頃から始まっていて、その集大成がこの作品でした。2枚組のアルバムとしての流れ・構成も見事。

 
小沢健二『So kakkoii 宇宙』

全編通して非常にファンキーで、ヴォーカリストとしても大きな成長を感じた作品。小沢健二の作品や発言から、様々なヒントや行動のきっかけをもらいました。
>>小沢健二が『So kakkoii 宇宙』で結ぶ、君と僕との「約束」|utsuwa|note
 
 
FINAL SPANK HAPPY『mint exorcist』

ピチカート・ファイヴが活動を休止した2001年「これで東京は終わった」と思った。それは実際にその通りになったけど(東京は地方と同じような均質化した街になった)、ピチカートのスタイルやハイプ性はSPANK HAPPYの活動に受け継がれていると思います。
 
 
オリジナル・ラヴ『bless You!』

小沢健二と同様、オリジナル・ラヴもこのアルバムで1990年代と現在を地続きにした。渡辺香津美とのコラボが良かったです。
 
 
bird『波形』

もし自分がいまミュージシャンだったら冨田ラボにプロデュースしてほしいと思うかもしれない。昔のジャム&ルイスみたいに、最新の機材と結びついた音像・音色にこだわり抜くプロデューサー。
 
 
Visible Croaks, Yoshio Ojima & Satsuki Shibano『FRKWYS Vol.15: serenitatem』

ヴィジブル・クロークスが日本の環境音楽のレジェンドと共演したアンビエント作品。グラミー賞にノミネートされたコンピ『環境音楽』にも通じる世界。
 
 
Mabel『Ivy To Roses (Mixtape)』

グローバルチャートで耳を引いた女性ヴォーカリスト、メイベル。母がネナ・チェリー、父がマッシヴ・アタックのプロデューサー、キャメロン・マクヴェイ(モーガン&マクヴェイとして90年代に活動し、「バッファロー・スタンス」でネナと共演)ということで、ブリストル・サウンドのチルドレン。少々レゲトン風味。
 
 
ITZY『IT’z Different』

K-POPに関心を持ったきっかけのシングル。歌詞がいまのジェンダー観を反映している。字幕をオンにして見てほしい。
 

::プレイリスト::

K-POP PLAYLIST 2019 SUMMER
春から夏にかけて聴いて衝撃を受けたK-POPから、ハロプロ好き目線でセレクト。
>>K-POP PLAYLIST 2019 SUMMER|パラグラフ

The Discovery of K-City Pop; K-POP PLAYLIST 2019 WINTER
K-POPのシティポップ寄りの曲からレコメンドだけを頼りにセレクト。実は2019年のベストソングの大部分がこのプレイリストの中に入っています。

筒美京平SONGBOOK[増補改訂版]
小沢健二の新作や発言をとっかかりに、筒美京平の作曲した曲を新旧の順に並べたプレイリスト。2019年のぼくの(仕事も含めた)ベストワーク。
>>筒美京平SONGBOOK[増補改訂版]|パラグラフ
(以上自作)

David Mancuso at The Loft
デヴィッド・マンキューソがThe Loftでかけた曲。24時間超えのロングプレイリスト。
Chiied 80s
80年代ニューウェイヴのインストゥルメンタルからチルアウト視点で選曲。
Peaceful Meditation
仕事のBGMに欠かせなかったチルアウト系プレイリスト。
電気グルーヴ
新作で帰ってきてほしい。
 
>>utsuwa|Spotify
 
 

:::メディア:::
 

 
::本::

82年生まれ、キム・ジヨン チョ・ナムジュ(筑摩書房)
アンジュルムック アンジュルム(集英社)
ぼくの平成パンツ・ソックス・シューズ・ソングブック 松永良平(晶文社|note)
作字百景 ニュー日本もじデザイン(グラフィック社)
うるさく、しずかに、ひそひそと/目で見て かんじて ロマナ・ロマニーシン、アンドリー・レシヴ/著 広松由希子/訳(河出書房新社)
ダースレイダー自伝 NO拘束 ダースレイダー(ライスプレス)
つけびの村 高橋ユキ(晶文社)
ねじまき鳥クロニクル 村上春樹(新潮社) *再読
 
::TV::

M-1 グランプリ 2019(テレビ朝日)
ITZY「MMA 2019 PERFORMANCE」(Paravi)
 
::映画::

アナと雪の女王2
 
::LIVE::

モーニング娘。’19「KOKORO&KARADA」@ハーモニーホール座間(9/21)
小沢健二「飛ばせ湾岸 2 nights、guitar bass drums で So kakkoii 宇宙へ ドロップ前夜、豊洲」@豊洲PIT(11/12)
 
 
テレビや映画をあまり見なかった代わりに、本を読みました。平成から令和へ。様々な表現から時代の変化の予兆が感じられました。その中で変わらないことってなんだろう。その答えを探し求めて「ねじまき鳥クロニクル」を何年ぶりかのサイクルで再読。
 
 

:::ハロプロ楽曲大賞’19:::
 

 

1位|いとしいとしと Say My Heart アンジュルム
2位|「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの? Juice=Juice
3位|全然起き上がれないSUNDAY アンジュルム
4位|高輪ゲートウェイ駅ができる頃には CHICA#TETSU(BEYOOOOONDS)
5位|青春Night モーニング娘。’19
*実際の投票から4位を変更しました。
 
次点|
もう一歩 アンジュルム
都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて BEYOOOOONDS
アツイ! BEYOOOOONDS
Go Waist BEYOOOOONDS
元年バンジージャンプ BEYOOOOONDS
恋愛奉行 BEYOOOOONDS
(リンクはすべてYouTube)
 
 
MV部門
1位|アツイ! BEYOOOOONDS

 

推しメン部門|加賀楓(モーニング娘。’19)


 

>>雨近対談2:春の公開実力診断テスト、楽曲大賞とハロプロ ’19 
──近日公開

 
>>第18回ハロプロ楽曲大賞’19
 

>>>2018年最も印象に残った××××

これから行くかもしれない展覧会[2020・1〜]

これから行くかもしれない展覧会[2020・1〜]

服部桜子&しもかわしょうこ 2人展「さくらこ&しょうこ」
2019年12月7日[土]―2020年1月17日[金]
MASATAKA CONTEMPORARY(東京・東京)
おせち料理のすごろくと、繊細に描かれた人物の絵。

つづくのつづき
2019年12月11日[水]―12月29日[日]
ほぼ日曜日(東京・渋谷)
ミナペルホネン「つづく」@東京都現代美術館の関連展。テキスタイルとその原画など。

サイトヲヒデユキの手がける本
2019年12月17日[火]―2020年1月26日[日]
NADiff a/p/a/r/t(東京・恵比寿)
小さく丁寧で実験的な仕事を重ねる装幀家/グラフィックデザイナー。

『アナと雪の女王2』展〜心のままに描く世界〜
2019年12月19日[木]―12月26日[木]
有楽町朝日ホール・ギャラリー(東京・有楽町)
「イラストレーション2020」とのコラボ。参加作家のペンネームが面白い。

Wanderlust
2019年12月20日[金]―2020年1月6日[月]
PARCO MUSEUM TOKYO(東京・渋谷)
井上嗣也、宇川直宏、グルーヴィジョンズ、KOHH、日比野克彦ほかが参加するグループ展。

高橋祐次個展「家の中の家」
2019年12月21日[土]―12月26日[木]
日本橋ナンワギャラリー(東京・神田)
あかね書房の絵本「ぼくはくるま、みんなもくるま」も販売。出版おめでとう。

ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター
2020年1月9日[木]―3月8日[日]
Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)
2017年に開催されて大好評だった写真展の第2弾。

和田誠追悼展(仮)
2020年1月10日[金]―1月15日[水]*日曜休
HBギャラリー(東京・表参道)
毎年欠かさずHBで展示していた。OPにも頻繁に顔を出されていたのが懐かしい。

効果のある/なしの境界線
2020年1月14日[火]―1月18日[土]
平和紙業株式会社 ペーパーボイス東京(東京・茅場町)
金インキを刷ったのに黄土色、など印刷あるあるを楽しいグラフィックとともに紹介。

ハマスホイとデンマーク絵画
2020年1月21日[火]―3月26日[木]
東京都美術館(東京・上野)
デンマーク絵画。写実的で生活感があって、ひと目見て気に入った。

[メモ]

noteをはじめました。当面はこのサイトの記事のアーカイブが中心です。
>>utsuwa|note

noteに先に投稿した、朝本浩文さんの思い出。
>>朝本浩文さんの初期のDJ仕事に同行した話|パラグラフ
 

2019年の短い総括です。

ここ数年までのような定期的な収入につながる仕事がなかった割には、不安に陥らず、心豊かに過ごせた一年でした。仕事がなくなる!と焦って他人に頼り切りで冷静な判断を失っていた去年(正確には今年2月頭)までの日々を思えば、はるかに幸せだったと思います。静かな仕事場兼自宅でいつでも好きなことができたし、外に出るのが減ったぶん、ストレスの原因となる物事や人との出会いを避けることにもつながって、いいことばかり 🙂 ひとつひとつの仕事に丁寧に向き合うことができました。

2019年に心がけた唯一のことは、仕事と趣味をあえて分けず、その時関心を持った物事にとにかく全力で取り組むこと、でした。文章を書くこと、音楽を楽しむこと、Spotifyのプレイリスト選曲、ヲタクとしての活動、etc……。その結果、自分が何をやっても常に楽しい状況を作り出せて、たぶん周りも楽しいだろうし、そんな中で予想もしなかった仕事が飛び込んできて、また喜びが深まったり。コンサートの時間や、ツイッターでのやりとり、音楽について調べるひととき……なんでもない時間がいつも楽しかった。

小沢健二の発言の影響でグローバルな世界に関心を持って、Spotifyの各国バイラルチャートを聴くうちにK-Popの魅力を発見し、筒美京平という作曲家の素晴らしさに気付くことができた。小沢健二は、作品と様々な発言によって、常識の隣りにあるものの存在に気付かせてくれた。今年のMVPでした。

その一方で、いま恩恵を受けている様々な物事の有限性を肌身で感じる出来事にも遭遇したり(個人的には耳の疾患。世間でいえば電気グルーヴなどの音楽が突然日常から消えてしまうこと)、政治や社会状況の酷さは日々極まるばかりで……。次の世代、具体的には自分の子どもに伝えていきたいことを整理しつつ、それでも、いまのこの時間を楽しむことに力を注げば、道は自ずと開けていくのではないか、と楽観的に考えています。

恒例の年末ベストなどについては、また改めてお知らせします。
 

>>これから行くかもしれない展覧会[2019・12~]

朝本浩文さんの初期のDJ仕事に同行した話

朝本浩文さんの初期のDJ仕事に同行した話

記憶は曖昧だが、おそらく1996年後半、THE BOOM(現在は解散)の所属事務所でファンクラブ会報を編集していた頃の誰も知らない話。個人的には、編集者からデザイナーにシフトチェンジするちょうど境目の時期だった。

朝本浩文さんは90年代前半から、THE BOOMのサウンドプロデュース(代表作としては「月さえも眠る夜」「帰ろうかな」、MIYA&YAMI「神様の宝石でできた島」など)とツアーのサポートに関わっていて、当時目黒にあった事務所に時々顔を出していた。
 

ある日、朝本さんと親しい社内のスタッフから妙な頼まれごとがあった。曰く、朝本さんが六本木にあったクラブ「ヴェルファーレ」の地上と地下の中間のフロアにあるバーで、DJの仕事を引き受けることになった。月に1〜2回、誰か会社で夜に動ける人がいたら手伝ってほしい、と。そして、ちょうど暇そうだった自分に白羽の矢が立った、というわけだった(朝本さんとは、一度だけ会報の取材で面識があった)。

朝本浩文さんといえば、ぼくにとっては、80年代のレゲエ/ダブバンド、MUTE BEATの憧れのキーボーディストとして光り輝く存在だった。地元の静岡にツアーで“来静”した際も勿論足を運んだ。「AFTER THE RAIN」の、鋭利な刃物のような佇まいと叙情性が同居するメロディに惹かれ、毎日のように繰り返し聴いていた。そんな朝本さんと仕事で接して行動を共にするまでになるとは……その頃のまだ青かった自分に教えてあげたかった。
 

DJの手伝いと聞いて、いわゆるボーヤ的な仕事かもと心配していたが、朝本さん曰く「心配ない。CDJだし、仕事は全部一人でやれるから何もしなくていい。寂しいから誰かに側にいてほしいだけ(笑)」とのことだった。後年には三宿Webなどで人気DJとして知られるようになった朝本さんだったが、DJとして人前で回す仕事はこの時がほとんど初めてという話だった。

本番当日。ぼくが会社で夜9時近くまで仕事をしていると、朝本さんが愛車のVOLVOのバンで迎えに来て、六本木まで一緒に向かう。現場のバーに入ると、店員から受け取ったビールを朝本さんに渡し、コップが空になる頃を見計らっておかわりを取りに行く。それだけの仕事。あとは3時間程度のDJの間、自分のぶんのビールも少し頂いて、ただのんびり過ごすだけ。金額は記憶にないが、申し訳なくなるくらいの謝礼もその度ごとに現金で頂いていたと思う。

現場は横長のフロアに2台のCDJとミキサーが設えられた小さなバーで、来客もヴェルファーレの地下の大バコで踊り疲れた人がちらほらと立ち寄る程度。DJ目当ての来客は皆無で、友人や音楽仲間が遊びに来たことも一度もなかったはず。むしろ朝本さん自身も積極的に身分を隠したがっていたようにみえた。

そんなDJ仕事でも引き受けることにしたのは、なんとなくの成り行きと(たぶんお金もそこそこ良かったのでは)、作曲・編曲家として、音楽マニアではない普通の人が音楽のどんな要素に反応するかを見るための「リサーチ」が目的だと、朝本さんは言っていた。

選曲も、当時の朝本さんが職業的に強い関心を持っていたはずの、ダブやトリップホップ、ジャングルなどマニアックな指向は前面に出さず、ダウンビート的な縛りは設けつつも、基本的に当時流行りのポップ・レゲエの曲を中心にかけていたようだった。完全に覆面DJだったこともあり、フロアは常に閑散としていた。たまに、下からやってきたサラリーマン風の客に当時ヒットしていたスノーやダイアナ・キングをリクエストされた時も、嫌な顔ひとつ見せずに対応していた。
 

一度だけはっきり覚えているのが、フロアが全く盛り上がらないのに業を煮やしたある夜、おもむろに財布から一万円札を出して「これでUAの『情熱』を買ってきて!」と頼まれたこと。夜10時過ぎ、六本木でCDを売っている店が思い浮かばず(六本木WAVEはまだあったが、たしか夜9時閉店だった)、パチンコ屋の景品コーナーまでくまなく探したにもかかわらず、結局手に入れることができなかった。戻ってお金を返し「ありませんでした」と報告すると、朝本さんも苦笑いしていた。

1996年当時の朝本さんは、MUTE BEATや第一期Ram Jam Worldなどでのフロントミュージシャンとしての活動に一旦区切りをつけ、サポートやプロデューサー、作曲・編曲家としてがむしゃらに働いていた頃だった。傍から見れば既に十分すぎるほどのキャリアを残しながらも、まだ個人としての確かな核を探し求めていた時期だったのかもしれないと思う。

そんな中でも、UAの「情熱」は朝本さんの高い音楽的指向とポップスとしての大衆性が見事に交わった、ヴェルファーレに遊びに来るような「普通の人」にも誇れる自信作だったのではないか。AUTO-MODやルースターズ、MUTE BEATなど、アンダーグラウンドな道を主に歩いてきた朝本さんだったが、自身の音楽表現に関しては、常に心のどこかでポップスと交わることを夢見ていた人だった気がする。

実際に、朝本さん自身も翌年の1997年頃を境に、ポップスのヒットメーカーとして引っ張りだこの状態になり(ぼくも編集からデザインに転職して多忙となり)、3〜4回、期間にして3か月くらい関わったところで、誰も知らないその仕事もいつの間にか消滅した。朝本さんもやがてTHE BOOMの仕事から離れていくことになり、以後の交流も自然と立ち消えていった。
 

送迎の車の中では(申し訳ないことに、帰りも親切に家の近くまで送っていただいた)、音楽的には何の接点もない素人同然のぼくにも垣根を持たず話しかけてくれて、朝本さんが当時関わっていた仕事のこと、よく聴く音楽、THE BOOMの話など、いろんな話題について話すことができた。「まりん(砂原良徳)からオタクっぽさを取り除いた人」というのがぼくの中での朝本さんの印象で、ふたりには僅かながら共通する要素が感じられる。博識なのに専門性に偏らず、常にフラットで、人との間に壁を作らない優しい人だった。

いまだに街で朝本さんのトレードマークだったドレッドヘアの人を見かけると、つい声をかけたくなってしまうのがよくない癖だ。
 


 

 

 
初出:note|utsuwa

これから行くかもしれない展覧会[2019・12~]

これから行くかもしれない展覧会[2019・12~]

絵本に見るアートの100年―ダダからニュー・ペインティングまで
2019年11月19日[火]―2020年1月19日[日]/後期
国際子ども図書館 レンガ棟3階 本のミュージアム(東京・上野)
アート史と絵本の歴史を長い一本の線で繋ぐ展示。展示絵本は貴重なものばかり。必見。

小さなデザイン 駒形克己展
2019年11月23日[土・祝]―2020年1月13日[月・祝]
板橋区立美術館(東京・成増)
絵本とパッケージにまたがる重要な展示。自宅からだと成増から徒歩19分。

TOKYOGRAPHIE 2019 アルバート・ワトソン写真展「Wild」
2019年11月29日[金]―12月12日[木]
FUJIFILM SQUARE(東京・乃木坂)
坂本龍一『ビューティー』のアザーカットなど。

小さな 小さな デザイン 駒形克己のMini Book展
2019年11月29日[金]―12月21日[土]
Books and Modern+Blue Sheep Gallery(東京・乃木坂)
最も小さな絵本「Mini Book」シリーズを展示。

白取知子個展「漂白のさなか、詩人の見る夢」
2019年11月30日[土]―12月8日[日]
シーモアグラス(東京・原宿)
ものすごく細かく描き込まれた自然物の絵。非常に気になる。

電子楽器100年展
2019年12月3日[火]―12月15日[日]
国立科学博物館(東京・上野)
テルミンからボーカロイドまで、電子楽器の100年の歩みを紹介する展示。

北澤平祐個展「花と生活」
2019年12月6日[金]―12月11日[水]
HBギャラリー(東京・表参道)
最近のきちっとした線画で描いている仕事の絵が好き(奥東京人、続 わけあって絶滅)。

日本・ポーランド国交樹立100周年記念 ポーランドの映画ポスター
2019年12月13日[金]―2020年3月8日[日]
国立映画アーカイブ展示室(東京・京橋)
昔ここで観てすごく良かった記憶が(ゴジラ映画とか)。前後期展示。

ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター
2020年1月9日[木]―3月8日[日]
Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)
2017年に開催されて大好評だった(非常によかった)写真展の第2弾。

[メモ]

申し訳ありませんが多忙につき、今月の展示はほとんど「行けないかも」です。。

グラフィックデザインを始めてから約20年間の歩みをまとめました。ダウンロード可。
>>下山ワタル DESIGN ARCHIVE|パラグラフ

前回のK-POP PLAYLIST 2019 SUMMERに続いて、筒美京平が作曲(編曲・プロデュース)した楽曲を、現在から作曲家デビュー当時に向かって遡るプレイリストを作りました。
>>筒美京平SONGBOOK[増補新訂版]|パラグラフ

noteに先に投稿した、小沢健二の新作の感想です。
>>小沢健二が『So kakkoii 宇宙』で結ぶ、君と僕との「約束」|パラグラフ
 

突然ですが、noteを始めました。

>>utsuwa|note

いまのところ過去にこのサイトに書いた日記系の記事を続々と追加しつつ、noteの機能を確認しながら試運転・様子見の段階です。新しい投稿も少しずつしていきます。

noteはリンクや画像の追加も簡単で、クリエイター向けの機能も用意されていて、WordPressよりも更新していく上での負担が少ない印象です。有料記事のしくみも含め、いろいろと可能性を感じています。

以前Tumblrで立ち上げた、自分の絵の発掘プロジェクトのページ(しなもんレトロスペクティブ)。更新やサイト構築していく上での不都合や面倒があまりに多く、こちらも近々noteへの引っ越しを検討しています。
 

11月頭に、このサイトの直近2年分の更新データが誤操作によって消えてしまい、手作業の末に(手元にデータがなかったため、検索エンジンに残っているキャッシュから1ページずつ回収して)なんとか復旧までこぎつけた……というトラブルがありました。

長く書き貯めてきたテキストがあっさり消える恐怖を体感したのをきっかけに、サイトの今後について(自分が死んだ後のことも含めて)強く考えるようになりました。

操作ミスばかりでなく、ブログサービスの廃止、自身の死去に伴うドメイン/サーバー停止など、今後起こりうる様々な出来事によってインターネット上に書き残した記録は常に消失の危険にさらされています。保管さえ注意すれば長期間残り続ける紙媒体に比べて、われわれの表現の多くを預けているインターネットの情報保管期限はあまりに短い。

死んだらそれまでよ、も「去り際の美しさ」なのかもしれないけど、これまで書き続けてきたテキストが自分の生きた証として、また後世の人々に役立つよう、少しでも長く残り続けてほしいと考えるのも自然な気持ちだと思います。

結論としては、自分のドメインがあるうちに、できるだけ長く続くことが見込まれる既存のサービスに過去のテキストをコピー(ダビング)していく。たとえば、ブログ/書き物系はnote、画像はInstagram、仕事はポートフォリオサービスへ。日常のライフログは今までどおりTwitterに、プレイリストはSpotifyに残す。……それらをつなぐプロフィールページみたいのがひとつあれば、個人による「ホームページ」は今後ますます不要になっていくのではないかと見ています。

参考
>>死後のブログ|103
 

>>これから行くかもしれない展覧会[2019・11~]

音楽は自由をめざす vol.6「艶歌と艶話」

音楽は自由をめざす vol.6「艶歌と艶話」

せたがや音楽プロジェクトのシリーズ公演「音楽は自由をめざす」のフライヤーを、前回に続いてデザインしました(昨年は、高山広の「アレサ・フランクリン物語」)。

今度のタイトルは「艶歌と艶話」。演歌と落語というふたつの芸能の世界で色事をテーマとして扱い、時代によっては禁止されながらも大衆に広まっていった「艶歌」と「艶話」の魅力を、今後大きな活躍が期待される若手の演者とともに紹介するイベントです。

寄席のイメージを引用しつつも、音楽プロジェクトであることを重視し(ストレートな寄席文字ではなく勘亭流を使って)、演芸の楽しさやフレッシュさが伝わるよう心がけました。

フライヤーは世田谷区の施設で配布されています。
チケット販売など、詳しくは〈せたおん〉ホームページをご覧ください。

音楽は自由をめざす Vol.6
「艶歌と艶話」
2020年2月11日(火・祝)成城ホール

[出演]演歌:杜このみ、中澤卓也、落語:瀧川鯉斗、三遊亭わん丈

>>イベント詳細|せたおん

>>高山広の「アレサ・フランクリン物語」|Works|パラグラフ